はじめに

引越し業界は、ネット通販や人口動態の変化などとはまた別の需要を抱えており、年間を通じて引越しや移転のニーズは絶えず存在します。
引越し業界のドライバーとして就業希望される方に関しては、現在ドライバーとして他の物流企業に勤めているか、これから未経験で運送業界に飛び込んでみようと考えている場合が多いのではないでしょうか。
配車の偏りや歩合制の不透明さによる収入の不安定さ、長時間労働が当たり前という風潮への不満が聞かれます。それは引越しドライバーでも例外ではありません。
しかし、実際のところ引越しドライバーは「きつい仕事」というイメージこそあるものの、条件や働き方次第ではかなりの高年収を狙えるとも言われます。
引越しドライバーの仕事内容から始まり、なぜ人手不足でニーズが高いのか、年収や給料はどのくらいなのか、さらに「きつい」と言われる理由や未経験からでもしっかり稼ぐ方法、おすすめの求人例などをご紹介します。
30~60代の方、あるいは未経験者を念頭に置いて、働き方を選ぶときに注意すべきポイントや現場のリアルな声も踏まえ、後悔のない転職・就職の選択につなげていただければ幸いです。
引越しドライバーの仕事内容ときつさ
引越しドライバーとは
引越しドライバーが担うのは、その名のとおり、顧客の荷物をトラックに積み込み、新居や新事務所などへの移動、荷下ろし、場合によっては家具の配置や梱包・開梱作業のサポートまで含みます。配送ドライバーと違う点は、積む荷物が家具や家電、大量のダンボール箱など、一般家庭やオフィスの家財道具が中心になるところです。
単に運転するだけでなく、現場での荷物の扱い方や顧客とのコミュニケーション、到着後の作業も大きな要素を占めるため、体力に加えてある程度のサービス精神や柔軟な対応力が求められる仕事です。
引越しドライバーの業務内容
そのため、引越しドライバーは、運転技術と同様に「いかに効率よく積み下ろしを行えるか」「いかに丁寧に荷物を扱って傷や破損を防げるか」という技術も問われます。
引越し企業には、大手で支店数が多く、定期的に大規模な引越し案件を受注しているところや、地域密着型で地元の個人・法人を中心に受注しているところが存在します。
大手企業の例としては、アート引越センター、サカイ引越センター、ハート引越センターなどがよく挙げられます。
これらの企業は全国に営業所があり、繁忙期(3~4月)には相当な数の臨時スタッフやアルバイトを募集することで知られています。逆に地域の中小引越し会社は、よりアットホームな雰囲気を特徴としていたり、社員数が少ないぶん融通が利く職場であったりしますが、労働条件の整備状況は個社ごとに大きく差があるので注意したいところです。
→トラック運転手の仕事はきつい?リアルな実態と選び方のポイントを解説
引越しドライバーは人手不足で年収がしっかり稼げる

引越しドライバーの需要
引越しドライバーは人手不足でニーズは高いと言われる背景には、年間を通じて一定数の引越し需要があり、とりわけ転居が集中する繁忙期に備えて企業が大量のドライバーを必要とする事情があります。
春の新年度前後はもちろん、年末年始や大安の日が続くタイミングなど、需要が一気に高まるシーズンには、平常時の倍以上の荷物を捌く必要も出てくるため、経験のある引越しドライバーが非常に求められるのです。
しかしながら、仕事内容がきついというイメージや、長時間労働の常態化、休日の不定期さなどを理由に離職率が高いという課題も存在し、人手不足が慢性化している企業も少なくありません。
引越しドライバーは未経験でも活躍できる
一方で、その人手不足こそがチャンスだと見る人もいます。未経験や年齢問わず、「体力に自信がある」「礼儀やサービス精神を意識できる」という人であれば歓迎されやすく、大手企業でも研修や先輩の同乗指導などフォロー体制を整えているところも増えています。
つまり、高いモチベーションさえあれば、業界未経験からでも正社員枠に滑り込んで年収アップを狙える可能性があるわけです。
とりわけ、企業としては20代や30代の若手だけでなく、40代・50代の社会人経験豊富な人も評価することが多く、実際に「長年工場勤務だったけれど転職して引越しドライバーに」という例も散見されます。
→【2025年版】ドライバー求人サイトを活用して転職を成功させる
引越しドライバーの年収や給料

引越しドライバーの年収
実際の収入面はやはり気になるところです。
結論から言えば、中小の地場企業で近距離を担当と、大手で遠距離・大型案件を担当とでは、年収に大きな差が生まれます。
大雑把に言えば、月収20万~40万円程度と幅があり、年間で300万~500万円という開きがあるのが現状です。引越しドライバーは運転だけでなく作業も多いため「歩合制+作業手当」で稼ぐ仕組みを設けている企業が多く、そこが収入増のポイントになりやすいという声が聞かれます。
引越しドライバーの大手企業の年収
大手のサカイ引越センターでは、繁忙期の稼働量や夜勤・長距離などをこなすことで月収30万以上を狙えるとされ、実際に40代で月収40万円以上に達している人もいるようです。
一方、別の企業では基本給が低く残業が多いわりに残業代が出ず、月収20万円台にとどまるといった負の例も見られます。「給料が下がった理由を説明してもらえない」などのトラブルを避けるためにも、求人票や面接で残業手当や作業手当の計算方法、休日出勤の手当がどうなっているかなどをしっかり確認する必要があるでしょう。
個人宅の引越しでは、お客様がドライバーや作業員の対応に感謝してチップを渡してくれるケースもあり、その額は人によりけりですが小さな収入の上乗せになる可能性もあります。
引越しドライバーが「きつい」理由と実態

引越しドライバーは重労働である点が挙げられます。引越し作業の大半は家具や家電、大量の段ボールなどをトラックに積んで運び出し、新居先でまた降ろすという流れです。
宅配ドライバーよりも荷物が大きく重量物が多いため、腰や膝への負担がかかりやすく、夏場は汗だくになりながらの作業になりがちです。エレベーターのない物件では階段作業が続くこともあり、体力面のハードルをきついと感じる人は少なくないのです。
また、繁忙期には一日に複数件を回さなければならないこともあり、長時間労働や短い休憩が続くケースも多いと言われます。
休めるタイミングが不規則で、「家族との予定を相談しづらい」「面接時との条件が違うくらい忙しい」といった不満を持つ人も中にはいます。
さらに、引越し作業はチームで動くことが多いため、メンバー同士の人間関係が合わない場合にはストレスが膨らみがちです。パワハラや嫌がらせが起きる現場もゼロではなく、コミュニケーションに不満を抱えて辞めてしまう人もいるようです。
そんななかでも、高収入を求めてあえてハードな現場を選ぶ人もいて、結果的に稼げるけれど長続きしないというジレンマに陥る場合もあるのが、この業種の実態となります。
未経験でもしっかり年収が稼げる魅力

とはいえ、引越しドライバーには未経験でも年収が高くしっかり稼げるという魅力があるのも事実です。
基本的に普通免許(MT車に限る場合も多い)があればスタートできる企業が多く、重量物を扱うために中型免許以上を要する例はあるものの、免許取得支援をしているところも増えています。
20代や30代の若手は体力面で融通が利くということで重宝されますし、40代や50代の中高年でも「責任感やコミュニケーション能力が高い」という評価を受けられれば採用されやすいです。
同じ大手企業の例を挙げれば、アート引越センターは未経験者向けの研修を設けるほか、チーム制で作業を行うため、入社してすぐでも先輩のフォローを受けながらノウハウを学べる点が評価されています。頑張り次第では手当や歩合給が上乗せされ、月収30万~40万円超も狙える事例があるとのことです。
また、引越し業界は意外に「コミュニケーション力」が大切です。運ぶだけではなく、お客さまと接する機会が多いため、丁寧な挨拶や気配りによって「次もお願いしたい」というリピート受注につながる場合もあります。
そのため、企業によっては接客研修を充実させており、接客スキルを発揮できる人にはチップやインセンティブのチャンスが広がるわけです。こうした仕組みを活かせば、未経験からでも想像以上の年収を得ることが可能でしょう。
引越しドライバーの年収の高いおすすめの求人と企業
引越しドライバーの求人を探す場合、大手企業としては「アート引越センター」「サカイ引越センター」「ハート引越センター」が有名です。
アート引越センターは社員教育に力を入れ、若手からベテランまで階層に応じた研修を整備し、給料形態も固定給と実績に基づくインセンティブを組み合わせている場合が多いです。
サカイ引越センターはシェアトップクラスであり、繁忙期や夜間作業で手当が上乗せされる仕組みがあるため、体力に自信がある人は稼ぎやすいです。
ハート引越センターは関東や関西を中心に展開し、比較的中距離・短距離の案件が多いという話もあるため、どれだけ体力を使って長距離を走りたいか、あるいは地場中心に働きたいかなどの希望と照らし合わせることが大切でしょう。
地域密着の引越し企業で、少数精鋭のチームで動き、融通の利くシフトを組んでいるところもあり、逆に「面接時と現場が違う」という不満が出る例もあります。
会社の口コミや労働条件通知書で確認し、トラブルを防ぐ努力を怠らないようにしましょう。
→配送業務委託ドライバーは稼げる!未経験から稼げる求人もご紹介
まとめ

引越しドライバーの仕事は、給与面では潜在的な稼ぎのチャンスが大きく、未経験からでも年収アップを期待できます。
慢性的な人手不足でニーズが高いため、体力やコミュニケーション力に自信があれば企業が積極的に採用していることも多いのです。
とはいえ、「きつい」と言われる理由が示すように、長時間労働や手積み手降ろしの作業、繁忙期の集中などで肉体的・精神的負担がかかりがちですし、会社によっては残業代が出ない、配車の偏りで収入が安定しない、人間関係にパワハラがあるといった例も見られます。
大手のアート引越センター、サカイ引越センター、ハート引越センターなどでは、研修制度や給与テーブルが比較的整っているため、稼ぎたい意欲を持つ人には向いていると言える反面、仕事量が多くなる繁忙期には残業が増える可能性が高いです。
もし引越しドライバーの世界に飛び込むなら、優先する要素(安定収入か、高額収入か、休日重視か)を明確にし、それに合った企業を見極めましょう。